同じ「うまくいかない」でも、原因は4つに分かれている

AIに任せてうまくいかないとき、多くの人は指示の書き方を直そうとする。この記事を読むと、丸投げの失敗が4つの型に分かれていることと、自分がいまどの型に当たっているのかを見分ける手順が分かる。


目次

章タイトル内容
全体の流れ—4つの失敗型が仕事のどの位置で起きるか
第1章丸投げは1つの失敗ではない態度の問題として語られてきたことの何が違うか
第2章失敗型① 判断が出力の中に埋もれる直したい場所を特定できなくなる仕組み
第3章失敗型② 前提が渡っていない一般論しか返ってこないときに起きていること
第4章失敗型③ 合格の条件が決まっていない何度出し直しても終わらない理由
第5章失敗型④ 文脈が毎回リセットされる昨日と同じ説明を今日もしている状態
第6章自分の失敗がどの型かを見分ける症状から型を引く手順
まとめ—4つに共通していること

全体の流れ

丸投げの失敗は、ひとまとまりの現象ではない。

AIに仕事を渡す前後のどこで何が欠けたかによって、4つの違う失敗になる。

自分の状況・材料を渡す
↓                        ← 失敗型② 前提が渡っていない
仕事を切って渡す
↓                        ← 失敗型① 判断が中に埋もれる
AIが生成する
↓
出てきたものを判定する
↓                        ← 失敗型③ 合格の条件が無い
次回へ引き継ぐ
↓                        ← 失敗型④ 文脈が毎回消える
次の仕事へ

4つとも、AIが生成する工程そのものでは起きていない。

起きているのは、その前と後である。

そして4つは、症状が似ているのに直し方が違う。

指示文を丁寧にしても直らない失敗があるのは、そのためである。

この記事が扱うのは、丸投げをやめる方法ではない。自分の失敗がどの型かを先に判定する手順である。


第1章 丸投げは1つの失敗ではない

1-1. 態度の問題として語られすぎている

「AIに丸投げするな」という言い方は、よく見かける。

だがこの言い方は、失敗の原因を人の姿勢に置いている。

任せきりにしたから悪い、ちゃんと自分で考えろ、という話になりやすい。

実際に起きていることは、もう少し具体的である。

丸投げというのは、渡すときに省略が起きている状態を指している。

省略されたものが何かによって、後で出てくる症状が変わる。

そのため「丸投げをやめる」という対処は、方向としては合っていても粒度が粗い。

やめるべきなのは丸投げという行為ではなく、そのとき省略した特定の何かになる。

1-2. 症状は似ているが、直す場所が違う

うまくいかなかったとき、人が口にする言葉はだいたい似ている。

「思っていたものと違う」「使えない」「結局自分で書き直した」。

この時点では、どれも同じ失敗に見える。

しかし何が欠けていたのかを問い直すと、分かれる。

出てきたものの状態欠けていたもの型
それらしいが、どこを直せばいいか分からない判断を外に出すこと①
一般論として正しいが、自分の話ではない自分の状況と材料②
悪くはないが、これでいいのか決められない合格の条件③
一度は良かったが、次回また同じ苦労をする次へ渡す形④

右の列を見ると分かるように、直す場所が4つとも違う。

②が原因のときに指示文の構造を工夫しても、材料が無いままなので変わらない。

③が原因のときに工程を細かく分けても、判定できないことは判定できないままである。

先に型を見分けないと、効かない対処を繰り返すことになる。

1-3. 「全部自分でやる」に戻すのは解決ではない

うまくいかない経験が続くと、AIを使うのをやめる方向に振れやすい。

これは失敗を減らすが、同時に得られるはずだったものも失う。

丸投げの反対は、全部自前ではない。

渡す前に、省略していたものを足すことである。

足すものは4つの型それぞれで違う。

次の章から、1つずつ見ていく。


第2章 失敗型① 判断が出力の中に埋もれる

2-1. 大きすぎる単位で渡すと、判断が見えなくなる

いちばん多いのがこの型になる。

仕事をひとかたまりのまま渡すと、その中に含まれていた判断がすべてAIの側へ移る。

例として、記事を1本作る仕事を「記事を書いて」と一度に渡した場合を考える。

このとき、次の判断がまとめて渡っている。

  • 誰に向けて書くか
  • どこまでを扱い、どこからを扱わないか
  • どの順番で説明するか
  • どんな例を使うか

出てきた文章を読んでも、このうち何がどう決まったのかは分からない。

判断した形跡が、文章の中に溶けているからである。

結果として、直したいのに直す場所を指せなくなる。

言えるのは「もう一度書いて」だけになり、次も同じことが起きる。

これがこの型の正体になる。

この失敗と、その直し方である工程分解については、AI時代に価値が上がる人の特徴 の第4章で詳しく扱っている。

2-2. 判定の目印は「やり直しの指示が抽象的になる」

自分がこの型に当たっているかどうかは、修正指示の言葉で分かる。

修正指示の出方状態
「もっと良くして」「なんか違う」判断が埋もれている
「第2章の例を自分の経験に差し替えて」判断が外に出ている

上の言い方しか出てこないなら、この型である。

直すには、渡す単位を切って、判断が発生する場所を外へ出すことになる。

この切り分けは、扱う対象が変わっても同じ位置に現れる。

副業埋もれやすい判断
記事作成誰に向けるか・どこまで扱うか
動画編集どのカットを残すか
デザイン何を主役にするか
データ整理どの列が判断に必要か

第3章 失敗型② 前提が渡っていない

3-1. AIは、こちらの状況を何も知らない

型①を直して工程を細かく分けても、まだうまくいかないことがある。

出てくるものが、教科書的に正しいのに自分の話になっていないという状態である。

このとき欠けているのは、切り方ではない。

自分の側にある材料である。

AIは、こちらが何をやってきたか、何を持っているか、何を避けたいかを知らない。

渡していない情報は、存在しないものとして扱われる。

そのため、一般に通用する無難な答えが返ってくる。

これは出力の質が低いのではなく、材料が足りない状態での正しい振る舞いである。

3-2. 「調べれば書いてあること」しか返ってこないなら、この型

判定は簡単で、返ってきたものが検索で出てくる内容と大差ないかどうかを見る。

自分の実感と結びつく部分が1行も無いなら、この型になる。

渡す材料は、大がかりなものでなくてよい。

渡すもの例
自分の状況いま何をどこまでやっているか
過去の失敗前に同じことをやって何が起きたか
使えるもの手元にある素材・ログ・過去の成果物
避けたいことやりたくない方向

自分の作業で、これが分かりやすく出たのはX投稿を作るときだった。

「投稿を作って」と頼むと、自分では書かない言い回しの文章が返ってきていた。

指示の書き方をいくら変えても、この傾向は変わらなかった。

変わったのは、過去の判断や失敗を書き溜めたログから素材を選んで一緒に渡すようにしたときである。

足りなかったのは指示ではなく、材料のほうだった。

そして材料は、AIの側からは絶対に補えない。

こちらしか持っていないからである。


第4章 失敗型③ 合格の条件が決まっていない

4-1. 判定できないと、やり直しが終わらない

材料も渡した。工程も切った。それでも終わらないことがある。

出てきたものを見て、良いとも悪いとも決められない状態である。

このとき起きているのは、合格の条件が事前に無いことになる。

条件が無いと、判定が「なんとなくの印象」になる。

印象は毎回ぶれるため、出し直すたびに評価が変わる。

そして直すべき点が定まらないまま、生成と修正を往復し続けることになる。

時間だけが減っていくのに、終わりの判断ができない。

4-2. 決めるのは、良い条件ではなく不合格の条件

ここで「良いものの条件を決めよう」とすると、たいてい書けない。

良さは言葉にしにくいからである。

書けるのは、これがあったら不合格という条件のほうになる。

対象不合格の条件の例
記事読んだ人が次に何をすればいいか分からないなら不合格
動画最初の5秒で何の話か分からないなら不合格
デザイン縮小表示で主役が判別できないなら不合格
データ整理抜けた行があったとき気づけない形なら不合格

いずれも専門知識を含んでいない。

そして重要なのは、これを生成の前に決めておくことになる。

出てきたものを見てから条件を考えると、目の前の出力に引きずられる。

先に一文だけ決めておけば、判定は一瞬で終わる。

4-3. この型は「量」ではなく「終わり方」に症状が出る

型③かどうかは、作業の終わり方で見分けられる。

  • 納得して終わったのではなく、時間切れで終わっている
  • 出し直した回数を覚えていない
  • 前の版と今の版のどちらが良いか説明できない

このどれかが当てはまるなら、条件が無い状態で回している。


第5章 失敗型④ 文脈が毎回リセットされる

5-1. うまくいった一回が、次に生きていない

型①〜③を直すと、一回の仕事はうまくいくようになる。

だが次に同じ種類の仕事をするとき、また最初から説明することになる。

AIは前回のやり取りを覚えていないためである。

この状態は、困っている感覚が薄い。

毎回それなりの成果は出ているからである。

気づくのは数か月後に「前にも同じ説明をした気がする」と思ったときになる。

一回ごとの成果は出ているのに、積み上がっていない状態がこの型になる。

5-2. 残すのは成果物ではなく、判断の基準

この型を直すとき、出来上がったものを保存しても効果が薄い。

次の仕事は前と同じものではないため、そのまま使えないからである。

残して効くのは、そのとき何を基準に決めたかのほうになる。

残すもの次にどう効くか
完成した成果物参考にはなるが、条件が違うと使えない
不合格の条件(型③)そのまま次回も使える
渡す材料の置き場所(型②)探す時間が消える
工程の切り方(型①)同じ種類の仕事に再利用できる

下3行は、いずれも前の章で足したものである。

つまり型④の対処は、①〜③でやったことを次回も使える場所に置くことになる。

この考え方をどこまで押し進められるかは、AI時代の自分専用知識データベース で扱っている。


第6章 自分の失敗がどの型かを見分ける

6-1. 症状から型を引く

いま起きている症状から、逆に型を引ける。

いま起きていること型足すもの
直したいが、どこを直せばいいか分からない①工程を切って判断を外に出す
一般論しか返ってこない②自分の状況・材料を渡す
何度出し直しても終わらない③生成の前に不合格の条件を一文決める
前にも同じ説明をした気がする④判断の基準のほうを残す

複数当てはまることもある。

その場合は、①→②→③→④の順で当たるのが早い。

前の型が残っていると、後ろの型の対処が効きにくいためである。

工程が切れていなければ材料の渡し先が定まらず、材料が無ければ合格の条件も決まらない。

6-2. 4つとも、AIの知識を必要としない

ここまで挙げた対処に、モデルの仕組みやプロンプトの技法は出てこない。

出てきたのは、切る・渡す・決める・残すという4つだけである。

どれも、扱う対象が変わっても形が変わらない。

型他の副業へ持っていくもの
①手順を書き出し、判断が起きる場所を外へ出す
②自分しか持っていない材料を先に渡す
③生成の前に、不合格の条件を一文決める
④成果物ではなく、判断の基準を残す

右の列に領域の知識は含まれていない。

動画編集でも、デザインでも、データ整理でも、そのまま同じ順番で使える。

移せるのは中身ではなく、順番のほうになる。


まとめ

AIに丸投げして失敗するとき、原因は態度ではない。

渡すときに何かを省略していて、省略したものによって症状が変わっている。

判断を省略すれば直す場所が見えなくなり、材料を省略すれば一般論が返り、条件を省略すれば終われなくなり、次へ渡す形を省略すれば毎回ゼロから始めることになる。

4つとも、AIが生成する工程の外側で起きている。

だから対処も、AIの使い方を覚えることにはならない。

自分が何を省略して渡したのかを、毎回1つだけ言葉にすることである。

それが分かれば、足すものは自動的に決まる。