調べ物を頼むと、読み込んだファイルの中身で会話が埋まってしまう。この章を読むと、役割の違う複数のAIに作業を分担させる方法が分かり、調べ物を別のAIに任せて結果だけ受け取れるようになる。自分で役割を作るところまで扱う。
目次
| 章 | タイトル |
|---|---|
| 1 | Sub Agentとは |
| 2 | Sub Agentを使うメリット |
| 3 | 最初から使えるSub Agent |
| 4 | 置き場所 |
| 5 | Sub Agentの記載内容 |
| 6 | 注意点 |
1. Sub Agentとは
Sub Agentは、別の会話を立てて作業させる仕組みである。
なぜこれが要るのかは、調べ物を頼んだときに起きることを見ると分かる。「基本的なコマンド — 会話の整理と状態確認をスラッシュコマンドで行う」の「会話を整理する(/clear・/compact)」で「会話が長くなると上限に近づく」と書いたが、その原因の多くは調べ物の出力になる。
自分:「この資料フォルダの中で、古い情報が書いてある箇所を教えて」
AI :ファイルAを読んでいます... (中身が表示される)
ファイルBを読んでいます... (中身が表示される)
ファイルCを読んでいます... (中身が表示される)
…20ファイル分続く…
結果:3箇所見つかりました
欲しいのは最後の3行だけである。しかし20ファイル分の中身が会話に残り、容量を圧迫する。
この後に本題の作業を頼もうとすると、すでに会話が重くなっている。/compact で整理する羽目になり、その過程で本題の前提まで薄れることがある。
調べる作業を別の場所でやらせて、結果だけ受け取る。 それがSub Agentになる。
【Sub Agentを使わない場合】
自分の会話
├ ファイルAの中身
├ ファイルBの中身
├ …20ファイル分…
└ 結果:3箇所見つかりました
↑ 全部が自分の会話に残る
【Sub Agentを使う場合】
自分の会話 別の会話(Sub Agent)
│ ├ ファイルAの中身
│ ← 調べてきて ───────→ ├ ファイルBの中身
│ ├ …20ファイル分…
└ 結果:3箇所見つかりました ←─ └ まとめて返す
↑ これだけが残る
Sub Agentは自分専用の会話枠を持っている。そこで何十ファイル読もうと、こちらの会話には影響しない。読んだ中身は向こうに置いたまま、要約だけが返ってくる。
2. Sub Agentを使うメリット
使うと何が変わるのかを、2つに分けて示す。
| 何が変わるか | |
|---|---|
| 1 | 調べ物で会話が埋まらなくなる |
| 2 | 書いた本人とは別の目で点検させられる |
メリット1:会話が埋まらなくなる
1章で見た通り、読んだファイルの中身は向こうの会話に残り、こちらには結果だけが返る。
効いてくるのは、調べ物の後に本題がある場合になる。調べ物で会話を使い切っていなければ、そのまま本題の作業へ進める。/compact で整理する手間も、整理で前提が薄れることも起きない。
メリット2:別の目で点検させられる
もう1つの使い方が、役割の違うAIを用意することである。
たとえば「書く担当」と「点検する担当」を分ける。書いた本人が点検すると見落としやすいが、別のAgentに前提なしで見せると、粗が見つかりやすくなる。
前提を知らないことが、ここでは利点になる。 こちらの会話の流れを引き継がないため、読者と同じ条件で読んでもらえる。
3. 最初から使えるSub Agent
自分で作らなくても、2つが最初から入っている。 どちらも読むだけで、ファイルを書き換えない。
Explore:調べる担当
探して、読んで、結果だけ返す担当になる。
どのファイルにその記述があるか、あるフォルダーがどういう構成になっているか、といった調べ物を引き受ける。何十ファイル読んでも、こちらの会話に返ってくるのは見つかった箇所だけになる。
「この資料フォルダで、古い情報が書いてある箇所を探して」
↓
Exploreが20ファイル読む(向こうの会話)
↓
「3箇所見つかりました」だけが返る
Plan:計画の下調べ担当
何をするか決める前に、必要な材料を集める担当になる。
「Plan Mode — 実行前にAIの計画を確認する」で扱ったPlan Modeで、計画が出てくる前にファイルを調べていたのがこの担当の仕事になる。調べ物の出力が会話に溢れず、計画だけが出てきたのは、この仕組みが働いていたためである。
つまり、Sub Agentは既に体験済みということになる。
どちらも自動で使われる
この2つはこちらが指定しなくても、AIが必要と判断すれば自動で使う。調べ物を頼めば勝手に使われるため、多くの場合は何もしなくてよい。
Sub Agentが動くと画面にその旨が表示される。中の作業内容は折りたたまれ、結果だけが会話に出る。
4. 置き場所
3章の2つで足りないときは、役割を決めたSub Agentを自分で用意できる。
1つのファイルが1つのSub Agentになる。 agents というフォルダーの中に置く。
~/.claude/agents/点検係.md ← 自分の全作業で使える
.claude/agents/点検係.md ← そのフォルダだけ
| 置き場所 | 効く範囲 |
|---|---|
~/.claude/agents/ | どのフォルダーで作業しても使える |
.claude/agents/ | そのフォルダーで作業するときだけ |
迷ったらユーザー用(~/.claude/agents/)でよい。どのフォルダーで作業しても使えるため、置き場所で悩まなくて済む。
ファイル名がそのまま名前になるわけではない。 名前は5章「Sub Agentの記載内容」の name で決まる。
5. Sub Agentの記載内容
ファイルは設定部分と指示部分に分かれる。上の --- で囲まれた部分が設定、その下が指示になる。
---
name: 点検係
description: 書いた文章を読み手の目線で点検する。文章を書き終えた後に使う。
tools: Read, Grep, Glob
---
あなたは初心者読者の代わりに文章を点検する担当です。
次の観点で確認し、問題があれば箇所を挙げてください。
- 説明なしで使われている専門用語がないか
- 一文が長すぎて意味を取りにくい箇所がないか
- 前の章を読んでいないと分からない書き方になっていないか
**ファイルは書き換えないでください。** 指摘するだけにします。
設定部分の3項目
| 項目 | 何を書くか | 省略 |
|---|---|---|
name | 名前。呼び出すときに使う | できない |
description | 何をするか+いつ使うか | できない |
tools | 使わせる機能 | できる(省略すると全部) |
description に「いつ使うか」まで書く。 AIはこの文を読んで、自動で使うかどうかを判断する。文章を点検する だけだと、いつ呼べばよいかが決まらない。
tools で、できることを絞る
tools に Read, Grep, Glob だけを指定すると、読むことしかできないSub Agentになる。
| 書き方 | できること |
|---|---|
tools: Read, Grep, Glob | 読む・探すだけ |
tools を書かない | 読み書き両方 |
書き換えができないので、意図しない変更が起きない。初めて作るなら、読むだけにしておくとよい(理由は6章「注意点」)。
指示部分
その担当者への説明文になる。 何をする係なのかを最初に書き、やってほしいことを並べる。普通の日本語でよい。
上の例では「初心者読者の代わりに点検する担当」と役割を決め、確認する観点を3つ挙げ、最後に書き換えを禁じている。
6. 注意点
前提は引き継がれない
Sub Agentは別の会話なので、こちらの状況を全部は知らない。
| 引き継ぐか | |
|---|---|
| CLAUDE.mdの内容 | 引き継ぐ |
| 権限の設定(「Permissions — 確認を減らしつつ、危険な操作だけ止める」) | 引き継ぐ |
| これまでの会話の内容 | 引き継がない |
| すでに読んだファイルの内容 | 引き継がない |
会話履歴が引き継がれないため、「さっきの話の続きで」が通じない。
(✕ 通じない)
さっき決めた方針で点検して
(○ 通じる)
「専門用語には説明を付ける」という方針で点検して
Sub Agentに頼むときは、「結果を安定させるコツ — 指示・頼む量・つまずいたときの判断」の「指示の書き方5つのコツ」の「終了条件を書く」「例を見せる」がより重要になる。前提を共有していない相手に頼む、と考えればよい。
なお、CLAUDE.mdは引き継がれる。毎回伝える前提はCLAUDE.mdに書いておくと、Sub Agentにも自動で伝わる(「CLAUDE.md — 会話をまたいで前提を引き継がせる」)。
/rewind で戻せない
「基本的なコマンド — 会話の整理と状態確認をスラッシュコマンドで行う」の「元に戻す(/rewind)」で /rewind を扱い、戻せないものを表で挙げた。Sub Agentが行った変更も、その仲間になる。
/rewind で戻せるか | |
|---|---|
| 自分の会話でAIが編集したファイル | 戻せる |
| Sub Agentが編集したファイル | 戻せない |
これは、Sub Agentが別の会話で動いているためである。こちらの会話を巻き戻しても、向こうで起きた変更は残る。
だから読むだけにする
5章「Sub Agentの記載内容」で「初めて作るなら読むだけにしておく」と書いた理由がここにある。
書き換えないSub Agentなら、戻せない変更そのものが起きない。 調べる・点検する用途に限っておけば、この注意点を気にしなくて済む。
書き換えをさせる場合は、「Permissions — 確認を減らしつつ、危険な操作だけ止める」の禁止ルールを併用する。権限の設定は引き継がれるため(上記)、deny で禁止したものはSub Agentにも効く。
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Sub Agentで、作業そのものを別のAIに預けられるようになった。ただし預けているのはその場限りの作業である。毎回どう進めてほしいかを説明する必要は残る。
同じ作業を繰り返すなら、その手順自体を保存しておきたくなる。
次の「Skills — 決まった作業手順を登録して使い回す」では、決まった作業手順を登録し、呼び出すだけで再現できる仕組みを扱う。「いつもの作業」を名前で呼び出せるようになる。